教会FAQ
新共同訳聖書の使徒言行録8章の37節は欠落していますが、口語訳では37節はあります。なぜですか。

  ご質問の日本聖書協会の口語訳聖書の当該箇所は以下のように訳されています。

○口語訳  〔これに対して、ピリポは、「あなたがまごころから信じるなら、受けてさしつかえはありません」と言った。すると、彼は「わたしは、イエス・キリストを神の子と信じます」と答えた。〕

○日本聖書協会の新共同訳聖書には以下の注釈があります。

(†底本に節が欠落 異本訳)フィリポが、「真心から信じておられるなら、差し支えありません」と言うと、宦官は、「イエス・キリストは神の子であると信じます」と答えた。

○日本語訳で口語訳よりも後に訳された新改訳聖書第3版にもこの箇所は欠落しています。


○英語訳ではたとえばNew King James Versionでは、以下のようになっています。

 Then Philip said, "If you believe with all your heart, you may." And he answered and said, "I believe that Jesus Christ is the Son of God."

しかし、Today's English Version (Good News Bible)ではこの箇所は欠落しています。


以上の通りですが、いったいなぜこのようなことになるでしょうか。

ご存知の通り、聖書には原本は存在しません。 あくまでも写字生により、口述筆記された写本しか存在しません。しかし、この写本もすべて同一ではありません。写本により、微妙な異なりがあり、写字生が書き誤ったり、明らかに誤りと思うところを訂正したり、付け加えたりしたと推測される部分も存在します。(これは厳密には聖書の教えに反することではありますが、、)

そこで、写本の本文批判を行い、正しい写本を確定してゆきます。そして、できあがった本文を校訂本と言います。校訂本は時代とともにたえず学術成果が加味され、検討が加えられ、改定されてゆきます。

新共同訳聖書翻訳の根拠となった校訂本(底本)はUBS(聖書協会世界連盟)の「ギリシア語新約聖書(修正第三版)」ですが、上記37節は真正のものと認めず、欠落となっています。口語訳聖書の校訂本(底本)はこれとは異なる(異本といいます)もので新共同訳聖書以前のものですので、そこには37節が認められており、これが訳されたものと思われます。

 ちなみに英語版詳訳聖書(AMPLIFIED Bible--Zondervan)では

  Many manuscripts do not contain this verse.(多くの写本はこの節がない)

                                           としています。

                                                         以上
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