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いろいろな理由がありますが、具体的には以下のようなことがあげられます。 1.キリスト教は言葉の宗教であるといわれることがありますが、ことばそのものが変化しますので、聖書のことばも時代にあわせ、各時代の人が理解できるように翻訳する必要があります。たとえば、聖書史上の名訳といわれる「ジェームズ王欽定訳」(KJV--King James Version)は近代初期英語ですが、それでも現代人には違和感があり、また理解できない部分があるかも知れません。 2.あたらしい写本や関係資料が次々と発見され、聖書学による正文批判が行われ、この結果、発見や学問の成果を取り込んだ新しい訳が求められるようになります。 3.社会や文化・慣行なども時代とともに変わりますがので、訳の吟味が必要となり場合があります。つまり古代の風習や習慣などをいかに吟味し、現代人に理解できるようにするか、むつかしいことですが、重要なことでもあります。 4.翻訳の方針が直訳から意訳かでも多くが論議され、それぞれの立場から翻訳が行われています。 5.教団、教派による教理や聖書解釈上の問題からの要請です。たとえば米国において、現在、NRSV--the New Revised Standard Version(新改訂標準訳)が、とくにプロテスタントの間で広く使用されていますが、保守的クリスチャンや福音派はこれを批判し、自分たちで翻訳したNIV--the New Internation Version(新国際訳)を使用しています。日本ではカトリック、プロテスタントの多くが新共同訳(プロテスタント教会では場合によっては口語訳)を使用していますが、聖書を『誤りなき神のみことば』と確信する福音主義のプロテスタント教会では「新改訳聖書」を使用しています。 6.現代の一般社会でいう禁忌用語や性差別用語の解決が必要です。卑近な例が、男女複数の集団を一括して表現する場合、男性名詞で代表する例があります。たとえば人間をmenで、兄弟姉妹をbrothersというように。これは古代の族長制、父長制の名残りで、いわゆる現代でいわれる性差別用語です。これをmenをhuman beings、brothersをbrothers and sistersと表現するような場合です。一例として、米国で刊行されたNRSV--the New Revised Standard Version(新改訂標準訳)はこのような表現に改められています。また禁忌用語の使用を改めることもそのひとつです。 7.教会になじみのない人や子どもたち、場合によれば学問の機会にあまり恵まれなかった人々にも容易に理解でき、聖書に親しめるように、平易なことばに置き換えたり、直訳(formal equivalence)ではなく徹底した意訳(dynamic equivalence)で神からのメッセージを伝えようとした聖書があります。たとえばGood News Bible(福音聖書)やLiving Bible(リビングバイブル)です。いきなり教会関係の専門的表現や慣用的表現に出会うと理解に苦しみますが、学究的立場とは別にして、広く理解を求めるため、噛み砕いて意訳すれば聖書になじむ機会がより多くなるのではないでしょうか。 一例として、リビングバイブル(以下LBと略)は現代語により一般に理解されやすいため、米国において、ベストセラーとなり、1971年刊行後の1年間でLBはアメリカで最も人気のある聖書となりました。1973年その印税は8百万ドル、1974年には2千9百万ドルにふくれあがり、1997年には4千万部が販売されました。LBのカトリック版も作成され、今なお入手可能です。 |
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